問題と正解
問題: 潜降する時に、耳や副鼻腔を圧平衡できない場合にはどのようにするべきですか?
正解: 止まって、数m浮上して、再び圧平衡してみる
解説とまとめ
この問題は、ダイビング中の「圧平衡(あつへいこう)」、特に耳や副鼻腔に関する対処方法を正しく理解しているかを確認するものです。ダイビングにおいて、潜降中の耳の痛みや違和感は誰しもが経験する可能性のある症状であり、その時の正しい対応方法を知っているかどうかは、安全なダイビングのカギを握ります。
まずは、圧平衡とは何か、そしてなぜ必要なのかをわかりやすく解説していきます。
圧平衡とは?
圧平衡(あつへいこう)とは、体の中にある空気の圧力と、周囲の水圧を同じにすることを意味します。人間の体の中で特に圧力の影響を受けやすいのが「耳(中耳)」と「副鼻腔(ふくびくう)」です。
これらの空間は空気で満たされており、周囲の水圧が高くなると、その圧力差によって鼓膜や粘膜が内側に押し込まれ、痛みや圧迫感を感じることになります。
そこで必要になるのが、「耳抜き」や「圧平衡」と呼ばれる行為です。鼻をつまんで軽く息を送ったり、飲み込む動作をしたりすることで、中耳や副鼻腔の空気圧を周囲の水圧と一致させることができるのです。
圧平衡がうまくできないとどうなるか?
潜降中に圧平衡がうまくできないと、耳の中で圧力差が大きくなり、痛みが強くなっていきます。そのまま我慢して潜降を続けると、次のような危険があります:
- 鼓膜の損傷(中耳バーotrauma)
- 副鼻腔内の粘膜の損傷(副鼻腔バーotrauma)
- 耳や鼻からの出血
- 一時的な聴力低下やめまい
これらの症状は、ダイビング後も長引くことがあり、安全で快適なダイビングの大敵です。したがって、圧平衡ができないときは、決して無理をしてはいけないのです。
正しい対応方法
この問題の正解である 「止まって、数m浮上して、再び圧平衡してみる」 という対応は、ダイビングで最も基本かつ重要な原則のひとつです。
具体的には次のような手順になります:
- 潜降中に耳や副鼻腔に圧迫感や痛みを感じたら、すぐに潜降を止める
- 無理に圧平衡を続けず、ゆっくりと1〜2メートルほど浮上して、圧力を軽減させる
- 痛みが引いたら、再度圧平衡(耳抜き)を試みる
- 圧平衡ができたことを確認してから、慎重に再び潜降する
この「浮上して圧力を緩めてから再チャレンジする」方法は、安全で効果的な対処法として広く知られており、耳や副鼻腔へのダメージを最小限に抑えることができます。
なぜ浮上することが効果的なのか?
水圧は10メートルごとに1気圧ずつ増えますが、実際には潜降直後の数メートルで最も圧力の変化が大きくなる傾向があります。そのため、わずか1〜2メートル浮上するだけでも、耳への圧力がぐっと和らぎ、圧平衡がしやすくなります。
また、気道の状態(風邪やアレルギー、鼻づまり)によっても圧平衡のしやすさは変わります。その日の体調にも注意が必要です。
ダイビング前の予防策
圧平衡をスムーズに行うためには、以下のような予防策も効果的です。
- 潜降前に耳抜きを数回練習しておく
- 風邪気味や鼻づまりの日はダイビングを避ける
- ゆっくりと時間をかけて潜降する
- 潜降開始から早め早めに圧平衡を行う
特に「潜降中はこまめに耳抜きを行う」という点は非常に大切です。痛みを感じてからでは遅いという意識を持ちましょう。
まとめ
今回の問題では、「圧平衡ができないときにどうするか?」という、ダイバーなら誰もが一度は直面する状況への対処法を問われています。
正解は、**「止まって、数m浮上して、再び圧平衡してみる」**です。これが最も安全で効果的な方法であり、無理に潜降を続けると耳や副鼻腔を痛める危険があります。
以下のポイントを覚えておきましょう:
- 圧平衡は、耳や副鼻腔の空気圧と周囲の水圧を一致させる行為
- 潜降中の痛みや圧迫感は、すぐに「止まって・浮上して・再チャレンジ」
- 無理は禁物。少しの浮上で圧力が緩和され、圧平衡しやすくなる
- ダイビング前の体調管理も重要な予防策
- 「圧平衡は痛くなる前にやる」が基本
耳や副鼻腔は非常に繊細な器官です。安全第一の精神で、正しい知識と判断力を持ってダイビングを楽しみましょう。知っていれば、防げるトラブルはたくさんあります。繰り返し学び、体に覚えさせておくことが大切です。
出典:PADI OPEN WATER DIVER MANUAL