浮上中の正しい浮力コントロール

目次

問題と正解

問題: ダイビングを終了して浮上している最中は
正解: 少しずつこまめにBCDの空気を抜く。


解説とまとめ

ダイビング中の安全な浮上は、トラブルを未然に防ぐためにとても重要です。特に、水中から水面に向かって移動する「浮上」のプロセスでは、体への負担や器材の影響、そして水中の物理的変化が複雑に関わってきます。

この問題で問われているのは、ダイビングを終えて浮上している最中の正しい行動についてです。正解は、「少しずつこまめにBCDの空気を抜く」というものですが、これは浮上中の急浮上や事故を防ぐための非常に重要なポイントです。


なぜ浮上中にBCDの空気を抜く必要があるのか?

BCD(Buoyancy Control Device/浮力調整装置)は、ダイバーが水中で浮力を調整するための器材です。浮上中には、水圧が徐々に低下することでBCD内の空気が膨張します。これは「ボイルの法則」によるもので、水圧が下がると気体の体積は大きくなるという自然の法則です。

この膨張により、BCD内の空気がどんどん増えていくことになり、そのままにしておくと浮力が強くなりすぎて、急激な浮上=急浮上につながるリスクがあります。

このような状態を避けるためには、浮上中にこまめに空気を抜いて、浮力をコントロールしながらゆっくりと上がることが必要なのです。


急浮上が引き起こす危険とは?

急浮上をしてしまうと、次のような深刻なトラブルにつながる可能性があります:

  • 減圧症(潜水病)
     体内に溶け込んだ窒素が急に気泡化し、関節痛やしびれなどを引き起こします。
  • 肺の過膨張障害
     息を止めたまま浮上すると、肺の中の空気が膨張し、肺を傷つけることがあります。
  • 耳や副鼻腔の圧平衡の失敗
     浮上が速すぎると、内圧と外圧のバランスが崩れ、耳抜きが追いつかずに痛みや損傷の原因となります。

このような事故を防ぐためには、浮上速度のコントロールが絶対に欠かせません。そのコントロール手段が、まさに「こまめなBCDの排気」なのです。


正しい浮上の手順とBCDの操作

ダイビングを終えて水面に戻る際には、以下のような浮上手順を守ることが大切です。

1. 浮上前に浮力を調整する

 浮上を開始する直前に、BCDの空気を一部抜いて浮力を減らしておくと、ゆっくりした浮上がしやすくなります。

2. こまめにBCDの空気を抜く

 浮上中は1m〜2m浮上するたびに少しずつBCDの空気を抜くのが基本です。こまめに調整することで、意図せず浮上速度が早くなりすぎるのを防げます。

3. スピードを確認しながらゆっくりと

 浮上速度の目安は1分間に約9〜10メートル程度。ダイブコンピュータや浮上速度インジケーターを活用して、安全なスピードを保ちましょう。

4. 安全停止を行う

 通常、水深5メートルで3分間の安全停止を行うことで、体内の窒素を効率よく排出できます。このときもBCDの空気量を微調整して、中性浮力を保ちましょう。


よくある間違いとその注意点

BCDの空気を一気に抜いてしまうと、今度は沈みすぎて浮力が足りなくなることがあります。また、排気バルブの操作が遅れると、浮上速度が急に速くなることもあります。

そのため、「少しずつ」「こまめに」「こまめに確認」することがキーワードになります。

また、BCDの排気バルブの位置や操作方法をあらかじめ確認し、どの角度で効率よく排気できるかを知っておくことも大切です。


まとめ

今回の問題「ダイビングを終了して浮上している最中は」の正解は、

「少しずつこまめにBCDの空気を抜く。」

というものでした。

この行動には、次のような大切な意味があります:

  • 浮上中の浮力をコントロールし、安全な速度を保つ
  • 急浮上による身体への負担や事故を防ぐ
  • BCDの空気膨張によるコントロール不能な上昇を防止する

水中から水面へと戻る「浮上」は、ダイビングの中でも最も重要な安全プロセスのひとつです。安全でスムーズな浮上のために、こまめな浮力調整を徹底することが、安心で快適なダイビング体験につながります。

特に初心者の方は、インストラクターの指示に従いながら、BCDの操作に慣れておくことが大切です。繰り返し練習し、浮上中の安定したコントロールを身につけましょう。

出典:PADI OPEN WATER DIVER MANUAL

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