問題と正解
問題: スクーバダイビングで浮上する時に息を止めてしまうとどうなりますか?
正解: 肺は重大な原因となるくらい膨張してしまう
解説とまとめ
この問題は、ダイビングにおける最も重大なルールの一つである「浮上時に息を止めない」理由について理解しているかを確認する内容です。水中では空気の性質が大きく影響を及ぼすため、その扱い方を誤ると命に関わる事故に繋がることもあります。
今回は、なぜ浮上時に息を止めることが危険なのか、何が起こるのか、そしてどうすれば安全に浮上できるのかを、やさしい言葉で詳しく解説します。
浮上時、体の中の空気はどうなる?
水深が浅くなると、水圧は低くなります。たとえば、
- 水面(0m)では1気圧
- 深度10mでは2気圧
- 深度20mでは3気圧
このように、水中では水深が深くなるにつれて圧力が高くなるという基本ルールがあります。
このルールに従って考えると、深い場所で吸った空気をそのまま肺に残したまま浮上すると、圧力が下がるにつれて空気は膨張することになります。これが危険の始まりです。
息を止めると何が起こるのか?
ダイビング中に肺の中の空気を閉じ込めた状態で浮上すると、その空気が膨張し、肺の壁を内側から押し広げることになります。人の肺はある程度までは膨らむようにできていますが、無制限に広がるわけではありません。
限界を超えて膨張すると、肺の壁が破れてしまうことがあります。これを「肺の過膨張障害」といい、以下のような重大な健康被害につながることがあります。
- 肺胞破裂
- 縦隔気腫(じゅうかくきしゅ)
- 皮下気腫
- 気胸(ききょう)
- 動脈ガス塞栓症(AGE)
特に「動脈ガス塞栓症」は、破裂した肺から漏れ出した空気が血流に入り、脳や心臓の血管を塞ぐという非常に危険な状態です。最悪の場合、意識障害・麻痺・死に至ることもあります。
これらの症状は、水深が浅くても、浮上スピードが早かったり、息を止めていたりするだけで起こる可能性があるため、どの深さでも常に注意が必要です。
なぜ「息を止めてはいけない」のか
水面では普通にできる「息を止める」という行為も、水中ではリスクが高くなります。なぜなら、水圧が変化する環境にいるからです。
- 水中で吸った空気は、その水深の圧力に応じた量が肺に入っている
- 浮上時に水圧が下がると、その空気は自然に膨らむ性質がある
- この空気を吐き出さずに閉じ込めると、肺が内側から押し広げられる
この一連の流れが、肺の過膨張を引き起こす理由です。だからこそ、ダイビング中には「呼吸を止めず、常にゆっくりと息を吐き続ける」ことが強く推奨されています。
安全な浮上のための基本ルール
肺の過膨張障害を防ぐためには、以下のような安全ルールをしっかり守ることが大切です。
- 絶対に息を止めない
→ どんなに浅い水深でも、呼吸は常に続けること - ゆっくり浮上する
→ 安全浮上速度は1分あたり9〜18mが目安。急浮上はNG - レギュレーターを口から外さない
→ 水中で安定した呼吸を保つための基本 - 空気が無くても無理に浮上しない
→ 緊急浮上時には訓練に基づいた手順で安全に行う - バディとの連携を忘れずに
→ トラブルが起きても一人で判断せず、サポートし合う
これらの基本的な行動を習慣づけることで、肺の過膨張による事故を確実に防ぐことができます。
「重大な原因となるくらい膨張する」の意味
今回の正解「肺は重大な原因となるくらい膨張してしまう」という表現には、肺が過膨張することでダイビング事故の直接的な原因となり得るという重要なメッセージが込められています。
この一言には、「命に関わるトラブルになる可能性があるから、絶対に息を止めてはいけない」というダイバーとしての最も大切な心得が詰まっています。
まとめ
今回の問題「スクーバダイビングで浮上する時に息を止めてしまうとどうなりますか?」の正解は、
**「肺は重大な原因となるくらい膨張してしまう」**です。
これは、浮上時に体内の空気が膨張し、肺を損傷する可能性があるという事実を示しています。息を止めるだけで起こるリスクが非常に大きいため、これはすべてのダイバーが常に意識すべき安全ルールです。
最後に、重要なポイントをまとめましょう:
- 水深が浅くなるにつれ、肺の中の空気は膨張する
- 息を止めたまま浮上すると、肺が過膨張して損傷する危険がある
- 肺の損傷は命に関わる重篤な症状(気胸や動脈ガス塞栓)を引き起こす
- 浮上時は「息を止めず、ゆっくり呼吸」を常に守る
- 安全なダイビングのために、呼吸と浮上の基本ルールは厳守する
浮上時の呼吸管理は、ダイビングで最も大切な命を守る技術のひとつです。どれほど経験を積んでも、この基本を忘れずに、安全で安心な水中活動を楽しみましょう。
出典:PADI OPEN WATER DIVER MANUAL